東京高等裁判所 昭和46年(ラ)17号 決定
もつとも、右競売事件記録によると、競落人酒寄が競落代金を完納したのは昭和四〇年一二月二日であり、本件引渡命令が申立られたのは同四五年一二月五日であるから、その間五か年を経過していて、引渡命令申立が競売事件の付随手続として代金完納後相当期間内に申立つべきものであることから考えれば、一見その時機を失したもののようである。しかし、他方右記録によれば、本件競売事件の債務者兼物件所有者である抗告人組合の代表者申立外大和田は抗告人の主張するように本件競落後、前記競落建物の所有権が自己にありとし、酒寄恒雄に対し、右建物につき、いわゆる処分禁止の仮処分を申請し同四〇年一二月八日これが決定を得た上これを執行したため、酒寄において右仮処分に異議を申立て右申立事件は水戸地方裁判所に昭和四二年(モ)第一八二号仮処分異議事件として係属し、審理を重ねた末同四五年九月二二日「右仮処分を取消す」旨の判決が言渡され、右判決にもとづき同年一一月五日仮処分取消の登記がされたものであることが認められるのであつて、このような事態のもとでは、酒寄としては事案の紛糾をさけるため右処分禁止の仮処分決定が取消されるまで本件引渡命令の申請を差控えていたものであることを推認するに難くない。
そうだとすると、右仮処分取消判決の言渡、仮処分登記抹消後間もない同年一二月五日申立てられた本件不動産引渡命令の申請は競落代金完納後相当期間内にされたものと認めるのが相当であつて、単に代金完納後三年を経過したとの一事をもつて本件引渡命令の申請が許されないものとすることはできない。
(川添利 荒木 田尾)